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わたしのライバル

わたしは匂いで思い出が蘇るタイプだ。

匂いってやつは本当にふとした瞬間にやってきて、嫌味なく思い出を引っ張り出してくれる。

初めて好きになった人の衣服は
ダウニーの匂い。

初めて買った香水は
フローラルとフルーツが混じった匂い。

泣くのを我慢しながら帰った帰り道は
青空に枯れ葉の匂いが混じってた。

すれ違った人から
昔好きだった人のタバコの匂いがした。

銘柄まで覚えてる。
ちょっとバニラの匂いがするやつ。

不甲斐ないライブの後は
いつも金属の匂いがして
気付いたら奥歯に力を入れていた。
悔しい時の匂い。

音楽もそれと近いことができると信じている。
だから、「あの曲聞くとさあの時の気持ちを思い出すんだよね」って、言われるような曲を書きたいと思う。

それでも、正直
匂いには勝てない気がする。

音楽を聴くためにはイヤホンが必要で、
iPodや携帯に音源を入れなくてはいけなくて、
CDなら機械に出し入れしなきゃいけない。

匂いは、何にも必要ない。

前触れもなくよぎるそのサプライズ感が、より強い思い出を引っ張り出してくれる気がする。

今日、自宅のエレベーターに乗り込んだら
突然、唯一無二だった親友の香りがして
どうしようもなく会いたくなってしまった。

悔しいなぁ。

だから、わたしの曲作りのライバルは「匂い」だ。匂いのする音楽を書きたい。


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singer "song & novel" writer  岡山生まれ 本の虫

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