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妄想日記「エメラルドグリーンの夢」

橋本るり子 25歳 カフェ店員
「るりちゃんはさ、背が高いからモードな服が似合うよ」小さい時から背の高かった私は、周りにそう言われてきた。だから、いつも黒い服を着ている。それらは確かに私に「似合う」から、安心して着れるのだ。でも、楽しくはない。真黒な服しかないクローゼットは、ダースベーダーのクローゼットみたいだし、もはや日中でなければどれがどの服なのか自分ですらわからない。猫が好きでペット可のマンションに住んだのに、服に毛がつくことを恐れて、結局猫も飼えていない。

そんな中、私に久しぶりの春がやってきた。リモート飲み会で知り合ったちょっと猫に似た男の子と、先日めでたく付き合ったのだ。彼は、3歳年下の大学生で、将来はグラフィックデザイナーになりたいらしい。私と違う世界で夢に向かって頑張る彼に、正直言って私はぞっこんだ。そして今日は、初めての彼の家にお泊りをする日。レースがあしらわれた黒いランジェリー、その上からイッセイミヤケのシンプルな黒タートルニット。そして、形が特徴的なコムデギャルソンの黒パンツ。靴は、黒いコンバースという格好にした。

彼の家に到着し、二人でカレーを作って食べ、ひと段落着いたところでなんとなく彼に声を掛けた。「ねえ、クローゼット見てもいい?」グラフィックデザイナーになりたい人のクローゼットとはどんな感じなのか、興味があったのだ。彼が快諾してくれたので、私は勢いよくベット横のクローゼットを開ける。すると、目の中にいろんな色が飛び込んできた。真っ赤なコート、黄色いパーカー、絵の具を散らしたかのようなデザインのシャツ。中でも光沢のあるエメラルドグリーンのシャツが綺麗で私の目を離さない。そんな私の後ろから、彼がひょいっと顔を出してそのシャツを指さしてこう言った。「この色、きっとるり子さんに似合うね。」私は驚いて首を振る。「何言ってるの。私に、こんなきれいな色似合わないよ。」「じゃあ、着てみてよ。俺、結構センスいいから大丈夫。」そう言って、彼はそのシャツを私の肩にかけてくれた。二人で、全身鏡の前に移動する。私は、こわごわ目を開ける。

「………わあっ!!」鏡の中の自分に思わずドキッとした。エメラルドグリーンをまとった私の肌は透き通って見え、顔色も心なしかよく見えた。振り返ると、彼が満足そうに笑って言った。「ね?言ったでしょ。黒よりそっちの方がるり子さんって感じ。」私は、素直に頷く。自分にときめいたのは、初めてだった。

「ねえ、もしさ、私が結婚した時はこんな色のドレス、デザインしてよ。」
「ほかの人との結婚なら嫌だけど、俺とのなら良いよ。」
「…ありがとう。」

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singer "song & novel" writer 岡山生まれ 本の虫

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