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楽描き「穴」

どこもかしこも工事をしている
大きな空き地に穴を掘って
大きな老人ホームを建てるんだって

大きな大きな穴だから
大雨が降ったら
大きな池になるかな
そこに金魚を離したら
綺麗だろうなって
工事が始まった時は思っていた

どこもかしこも工事をするから
窓の向こうは穴だらけ
歯を大切にしなかったら
こんなことになるのかなって笑った

久しぶりに会った父と母は
少しずつ老いているのだとわかった
久しぶりにカメラに写した自分は
少しずつ穏やかになっていく

子どもが少なくなっているだとか
いつもどこか他人事のようだった
この国の膨大な借金だとか
わたしにはイメージができなかった

他人事だったことが
自分の物語になっていく

午前と午後の間に休憩をして
窓の外を見下ろすと
今日も大きな穴がそこにある
太陽に野ざらしにされた
その場所がいつかわたしの場所となる

そんなイメージをしながら
啜るコーヒーはいつもより苦かった

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歌絵文作家 岡山生まれ 本の虫