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妄想日記「憎めない宅急便」

植木立夏 19歳 学生 2020.11.12

19歳って中途半端な年齢だ。大人でもなければ子供でもない。なめられたり、できることが制限されたりするわりに、お金や日々の生活などは自立を求められる。大学進学で一人暮らしを始めてから、そう痛感する出来事がいくつかあった。例えば、引っ越し初日に、どこで聞きつけたのか新聞セールスの人がやってきて、断っているのに強引に契約を求められたりした。友達に誘われて行ったクラブで身分証を提示すると、私は入場が出来なかった。誘ってくれた同級生は、数か月早く生まれただけでクラブで朝まで踊ることができるのにだ。やっぱり、19歳は中途半端な年齢だと私は思う。

「え?時間指定ができない?困ります。」私は、不在連絡票を握りしめて言った。空きコマだったので帰宅すると、ポストに不在票が入っていたのだ。「いやあ、そう言われても順番に回ってるんで、すみません」電話の向こうでは、使い古された文句が聞こえてくる。「でも、大学もあるし、今日一日、家で待ってるわけにはいかないんですよ」私は、段々イライラしてきて声が大きくなった。「なるべく早くいくんで!すみませんー」そう言って電話の向こうのお兄さんは電話を切ってしまった。私は「まただ…」と大きく肩を落とす。「なめられている。学生でしかも女子だ、って完全になめられている!!」壁に掛けられた時計を見る。もうそろそろ家を出て、大学に行かなくてはいけない時間だ。けれど、このまま授業に出席したとして、黙って大人しく聞ける自信がない。怒りが爆発している私は、腹をくくって今日は授業を休むことにした。

夕方に差し掛かる頃、突然雨が降り出した。夕立だろうか、と他人事のように窓から空を見た。時計を見ると、ちょうど授業が終わる頃だ。「休んで、ラッキーだったじゃん」と声に出すと、罪悪感も減って何だか気分がよくなってきた。その時だった。「ピンポーン」と、チャイムが鳴った。「き、来た…!!!」私は、玄関に向かいながら戦闘態勢に入る。もう、二度と舐められてたまるか…!!自分に喝を入れ、勢いよくドアを開けた。

すると、目の前にはびしょ濡れのお兄さんが申し訳なさそうに立っていた。「遅くなってすみません。配達に参りました」そう言って、段ボールを私の方へ差し出した。びしょ濡れのお兄さんとは対照的に、段ボールは全く濡れていない。サインを書きながら、ちらりとお兄さんの方を見ると胸元の携帯がずっと光っている。きっと、再配達の電話だろう。光り続ける携帯を気にしながらも、お兄さんは私がサインを書くまで動かない。何だか、お兄さんが濡れた子犬に見えてきて、さっきまで怒っていた気持ちがシュルシュルと解けた。サインを渡すと、お兄さんはニッと笑って「ありがとうございました!!」と言った。その「ありがとう」には誠意がこもっていて、気持ちよかった。きっとお兄さんは、19歳の私にも、どこかの主婦にも、誰かのお父さんにも平等に気持ちのいい「ありがとう」を言える人なんだろう。そして、私は未成年で女子大生であることを気にしすぎていたことに気付いて、何だか恥ずかしくなってきた。私は、自分の恥ずかしさを覆い隠すように「こちらこそ無理言ってごめんなさい!ありがとうございました!」と、去っていくお兄さんの背中に叫んだ。お兄さんの耳に、届いたのかどうかはわからない。でも、私の心のしこりはスッとどこかへ消えていた。

20歳になるまでの数ヶ月、私はもっと19歳を楽しもうと心に決めた。

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歌絵文作家 岡山生まれ 本の虫

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