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モンブランの家

朝、壁の向こうから
ガッシャーン!ゴロゴロ!ドッカーン!

騒音の奇襲で飛び起きる。
そんなことがここのところ続いている。

騒音の正体は、向かいのマンションの改修工事と斜め横の家の緑を伐採している音と、目の前の空き地の草を根こそぎ抜いて工事している音。そんな揃いも揃って同時にしなくても…というくらい三つの騒音が重なって我が家の朝はチャンバラ騒ぎだ。

先日、そのお詫びとやらで
「ちょっと良いタオル」が、ポストに入っていた。最初「おっ」とにやけかけたが、いやいやいや!違う!耐えれん!早く終わってくれ!と叫びかけた。いやぁ、自宅で仕事をする身としてはなかなかに参っている。

でも、そもそも東京という街はいつもどこかを工事している街だ。つまり、毎日どこかが壊されて、どこかが直されて、どこかに新しい建物ができている。ということで、今日は、以前住んでいた家の改修工事との戦いについてお話ししようと思う。

以前住んでいた家は閑静な住宅街に突如現れるゴリゴリのデザイナーズ物件で、外側を二重のガラス( 内側が普通のガラス、外側が擦りガラスで出来たブラインドになっている )で囲まれていた。中はコンクリ打ちっぱなしで、床は真っ白のタイル。生活感のなさに惹かれてその物件を選んだ。

ある日、マンションの裏に住む大家さんがやってきて「えー、外側のガラスのブラインドの改修工事を行います。皆様にはご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。」と言った。

そして、その日を境に私の家は大混乱に陥る事となる。

そもそも、二重ガラスの外側、擦りガラスのブラインドは目隠しのためについている。全面ガラス張りなのだから、そのブラインドがないと部屋の中が外から丸見え!となるのである。もちろん、私は擦りガラスのブラインドに頼り切ってカーテンは必要最低限のところにしかつけていなかった。その命綱が、その改修工事とやらによって全部取っ払われてしまったのだ!

恐怖!いきなり吊るされた工事のおじさんがガラス越しに現れた瞬間!
恐怖!普通に目の前の家の人とガラス越しに挨拶する瞬間!
恐怖!二重ガラスの間で干していた下着や服を工事のおじちゃんが「これ、しまってね〜」とこれまたガラス越しに訴えてくる瞬間!

いつ、工事のおじさんがガラスの向こうに現れるかわからないのでパジャマから服に着替える瞬間が見つからない。こそこそ、トイレで着替えながらため息が出た。「こんな丸見えな生活勘弁してくれ…」心からそう思った。

そんな生活が数ヶ月続いた後ようやく改修工事が終わると、次に台風がやってきた。そして、朝起きると新しく差し込まれた磨りガラスが一枚抜け落ちて割れていた。私は、それで、引っ越しを決意した。

直したり、壊したり、作ったり…
東京は相変わらず生きた粘土のように毎日変化している。でも、大体は灰色で硬くて高いビルが建ったり消えたりしていて大差ないように思う。一個一個の建物が重要文化財指定されるような「特別な」建物でないと、どうやら、この街はずっとこんな感じなのだろう。五重の塔みたいなビル( いや、むしろ五十の塔も見てみたい )、モンブランみたいな不思議な形をしたビル( ショートケーキ型もいいね )、教会みたいな荘厳なビル( 結婚式もできたらいいなぁ )そんな、楽しい工事なら全然騒音も我慢できる。そんな楽しい工事で溢れる東京を、私は見てみたい。

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SETA 公式note

singer "song & novel" writer  岡山生まれ 本の虫

SETAの日々煩い

エッセイ、読書感想 etc.
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