SETAの日々煩い

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楽描き「空から見下ろせば」

空を見上げると
ああ、遠い、と思った
16歳、煮えたぎる夏のまんなかで

恋人との諍いも
傘を盗んだことも
親にはいえないような
女の子たちの語らいも

空から見下ろせば
ああ、遠い、と思うのだろうか

いま、東京の空を見上げると
ああ、狭い、と思う
ビルに押し潰された空も世の中も

友達の友達が実は同僚で
お隣さんと同じ病院に通う
ニュースはいつも同じ話題で
みんな何かに怒っていた

空から見下

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妄想日記「母とLINE電話」

「ああ、この前のお茶ありがとう。おいしかった」
目の前には、開けたばかりの段ボールと大量のお茶のパッケージがある。その中から一つ取り出して、パッケージに書かれた説明を見ながら母と電話をしている。まだ飲んではいないのだけれど、ここ最近仕事が忙しくて段ボールを開封するまで日にちが空いてしまった。罪滅ぼしの嘘だった。
「よかった。あれ、○○って店で見つけて、一つ一つ手作業で作ってるんだって」
「ふぅん、

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楽描き「抱きしめたい」

わたしはいま
抱きしめたい

去年の終わりに
未来が見えたなら
すれ違う人すべて
抱きしめたのに

春には 手作りマスクを作り
夏には 暑さでマスクと死闘した
秋には それが当たり前となり
冬には 誰も何も言わなくなった

いつから母の胸に
飛び込むのが恥ずかしくなったのか
もう忘れてしまったみたいに

友達と酔った中目黒
外国人みたいなハグをして
ふわっと香ったシャンプーの匂いも
もう忘れてしま

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