SETAの日々煩い

280

妄想日記「理想のカルテ」

「あの、早く着きすぎてしまって」

「大丈夫ですよ。お名前は?」

「15時に予約していた佐藤です」

「佐藤…?(紙をめくりながらチラリとこちらを見る)」

「あ、佐藤もえです」

「佐藤もえ様ですね、お待ちしていました。こちらのカルテの記入をお願いします(笑顔だが目が笑っていない)」

「こ、これ、全部ですか?(怯えながら)」

「はい」

「ざっと、30ページはありそうですが…(訴えかけるよ

もっとみる

楽描き「失恋ヒップホップ」

Yo!
西日に焼かれたビルの輝き
恋に敗れたわたしに厳しい
彼に最後に言ってやりたい
夢見る前にバイトしろ
だけど言えるはずもなかった
夢見る彼がすきだった

同じような男ばっか
同じようなクズばっか
同じような夢ばっか
性懲りも無く繰り返す
わたしは来世に期待しよう

Yo!
わたしの財布は彼の財布
わたしの投資
彼を信じた当時
2人の未来のためだと信じてた
信じたいわたしのためだった

同じよ

もっとみる

妄想日記「失敗作じゃない」

木村睦月 18歳 高校生

受験を目の前にして、今わたしの頭の中は「まっしろ」だった。もちろん、進路について無計画だったわけではない。それどころか、「大学生生活を送りたいから」という理由で受験する子たちよりも、美術という道に志を持って受験の年を迎えたはずだった。しかし、画塾に通い始め、いざ本格的に絵と向き合う時間が増えれば増えるほど、まっしろのキャンパスに描くべきものを見失った。そして、朝から昼ま

もっとみる

妄想日記「初恋と巡る」

佐藤優 22歳 大学生

初めての教育実習、1日目が終わった。後は、明日の授業計画を担当教師に提出して帰るだけ。先輩たちから、「時間があるうちに体力温存すべし!」とのアドバイスをもらったので早く帰って眠ろうと思う。その時だった。ガラガラッと教室のドアが開いた。飛びあがった心臓を押さえながらドアの方を見ると、同じく左胸を押さえて立ちすくむ女子生徒がいた。私は、ホッとして見習い教師という立場を忘れ、フ

もっとみる

楽描き「お団子スイッチ」

あなたの前で
お団子をつくるのは
誘惑してるわけじゃない

少しやる気が欲しいとき
少し気合を入れるとき
お団子スイッチを押してるだけ

あなたの前で
髪をかきあげるのは
色気を出してるわけじゃない

少し視界が悪いとき
少し話がつまらないとき
髪をかきあげているだけなの

ピリピリするリップグロスは
眠気覚ましをする為に
赤い下着をつける日は
大事な仕事に向かう日だ

だけど、たまに本気で誘った

もっとみる

楽描き「幻の人」

勉強をしながら
遊んでいて
眠りながら
計算ができる
そんなひとっている?

優しくもあって
美しくて
賢くて
料理がうまい
そんなひとっているの?

黒板の上に貼られたスローガン
「みんな違ってみんな良い」
わたしは幻を見上げている

頑張りさえすれば
苦手なことを
なんだって
克服できる
そんなひとっている?

楽しくもあって
詳しくて
謙虚で
欲がない
そんなひとっているの?

来週は身体測

もっとみる

楽描き「きれいになりたい」

別に、ケイトモスに
なりたいわけじゃないの

筋肉のついた細い足
まっすぐ割れた腹筋
それでいてチャーミングなからだ

そんな風になりたいわけじゃないの
高望みだってわかっているから

それなのに、ジムで汗をかく
重い鉄を抱きしめて
膝を曲げたり伸ばしたり
動かない窓の景色を前に
ハムスターみたいに走る

別に、ケイトモスに
なりたいわけじゃないの

だけど
きれいになりたい
1ミリでも
きれいに

もっとみる

楽描き「どちらの方が好きか論争」

ふりかえっちゃいけないよ
デートの後に
ふりかえっちゃいけない

わたしがふりかえったのに
あなたがふりかえらなかったら
わたしの方が好きみたいで
ジリジリとしてしまうから

繋いでいた手を解いて
じゃあね、と言った時
まだもう少し、と思う
あなたはそう思わない?

ジリジリとしてくる
メソメソとしてくる
やれやれと思う

くるりと体を反転させて
わたしは歩きはじめる
あなたの歩く一歩一歩を
聞き

もっとみる

妄想日記「全部、鍋の中」その2



そこまで読んでから、私は昔の苦い記憶を思い出した。幼稚園の頃、友達だった桃ちゃんと些細なことで喧嘩した。当時好きだった、おジャ魔女どれみのキラキラしたシールを私の前にかざしながら桃ちゃんはこう言った。「私、他のシールも沢山あるから、りこちゃんにもあげるよ」そう言われた私は嬉しくて桃ちゃんの家に遊びに行くと、桃ちゃんはくるりと振り返って笑った。「やっぱり、あげない!!!!」その瞬間、火が付いた

もっとみる

妄想日記「全部、鍋の中」その1

葉加瀬理子 16歳 高校生

人は大体、眠った瞬間を覚えていない。だから、夢を見ていても途中まで夢だと気づかないことがある。今夜のように、夢の始まりが現実味を帯びているときは絶対に分からない。きっと、魂が私の身体にばれないようにそおっと夢への扉を開けたんだ。

そこは、慣れ親しんだ我が家のリビング。明るくて、長持ちするLEDライトがサンサンとダイニングテーブルを照らしている。ただ、いつもと違うのは

もっとみる