SETAの日々煩い

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楽描き「穴」

どこもかしこも工事をしている
大きな空き地に穴を掘って
大きな老人ホームを建てるんだって

大きな大きな穴だから
大雨が降ったら
大きな池になるかな
そこに金魚を離したら
綺麗だろうなって
工事が始まった時は思っていた

どこもかしこも工事をするから
窓の向こうは穴だらけ
歯を大切にしなかったら
こんなことになるのかなって笑った

久しぶりに会った父と母は
少しずつ老いているのだとわかった
久しぶ

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楽描き「飛びたい翼」

今日ね、いつものお花屋さんで
一本お花をサービスしてくれたの
ちゃんとね、わたしの目を見て
いつもありがとうございますって
わたし、うれしくて、飛びたくなった

そこのね、新しくできたお店の
サンドイッチ、お日様の味がしたの
ちゃんとね、誰もいない公園で
マスクを降ろして食べたあの味は
わたし、しあわせで、笑ってしまう

わたしが好きなわたしの翼
誰にも見えないわたしの翼は
飛びたがっているんだ

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楽描き「コロコロ」

そろそろ 
コロコロ
しなくちゃな

目には見えない
小さなホコリも
細くて 茶色い
わたしの髪の毛も

根こそぎ ぜんぶ
まとめて 粘着
そこどけ 蜘蛛よ
逃げたら つづき

コロコロを転がす
ホコリのない一本線
透明なレッドカーペットみたい
コロコロを剥がす
心機一転場所を変えて
まだまだきれいになりそうだ

根こそぎ ぜんぶ
まとめて 粘着
そこどけ 蟻よ
何故 ここに

コロコロは進んでく

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楽描き「まだちょっとある」

まだちょっとある、と
思いたかったんだろうか

犬はいつまでも舐め続ける
もう空っぽになった餌入れを
まだちょっとある
まだちょっとあるはず
犬を餌入れから剥がす時
少し意地悪な気持ちになる

背中を向けて眠る君の背中に
終わりそうな恋の灯火
まだちょっとある
まだちょっとあるはず
手を伸ばしては止まる
拒絶されるのはいつだって辛い

高熱を出した子供は苦しそうだ
味もわからぬお粥を
舌を焼きなが

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楽描き「あなたへ」

あなたは
どんなおとなになるのかな
ふっくら炊きあがった豆みたいな
かわいい手のひらのまま
大きくなってくれたらな

どんなおんなになるのかな
どうか自分のために生きて欲しい
真っ直ぐな笑顔のまま
素敵なおんなになってね

どんな夢をもつのかな
本当はあんまり
びっくりさせないで欲しいけど
手放したくない夢を
ひとつだけ見つけてね

どんな人を好きになるのかな
車が好きな人と賭け事する人は
やめて

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楽描き「5年後の私に」

タイムスリップできるなら
過去と未来どちらを選ぶ?
そう聞かれて 過去を選ぶとき
それは未来が不安なときだ

久しぶりの仲間と同窓会
あの頃は、の話題で
持ちきりなのは
過去にしか僕らがいないからだ

バブルを知らない私に
バブルの様子を語り継ぐ先輩たち

こんな風に
お金を使って
あんな風に
踊り明かしたんだ、と

コロナを知らない子供たちに
いつか私も語り継ぐのだろうか

こんな風に
マスクを

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楽描き「空から見下ろせば」

空を見上げると
ああ、遠い、と思った
16歳、煮えたぎる夏のまんなかで

恋人との諍いも
傘を盗んだことも
親にはいえないような
女の子たちの語らいも

空から見下ろせば
ああ、遠い、と思うのだろうか

いま、東京の空を見上げると
ああ、狭い、と思う
ビルに押し潰された空も世の中も

友達の友達が実は同僚で
お隣さんと同じ病院に通う
ニュースはいつも同じ話題で
みんな何かに怒っていた

空から見下

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