SETAの日々煩い

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妄想日記「学校に忍び込む夢を見る」

三村さえ子 17歳 高校生

3限目と4限目の間の移動教室。職員室の前の廊下ですれ違った女の子から、強い金木犀の香りがした。金木犀が香るとしては早すぎる。おそらく、彼女は校則で禁止されている香水をつけているのだろう。「ああ、きっとあの子は3点減点ね」とさえ子は思う。続けて「まあ、減点されても朝の清掃活動を3回やれば取り返せるとでも思っているんでしょ」と心の中で呟いた。さえ子には、そこまでして校則を

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妄想日記「黒いジャケットと紫のスカート」

安田聡子 31歳 フリーランス

「さとちゃん、黒いジャケットも持ってないの?」

昨年、結婚を機に退社し、今はお腹の中に新しい命もいる私の幼馴染兼親友のともちゃんが言う。

「だって、持ってても使わないもの」

「それ、持ってないから使わないだけだよ。現に今、黒いジャケットを私から借りようとしてるのはどこの誰よ」

こういう時のともちゃんは、お母さんみたいになる。私は、彼女の膨らんだお腹を見て、

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妄想日記「理想のカルテ」

「あの、早く着きすぎてしまって」

「大丈夫ですよ。お名前は?」

「15時に予約していた佐藤です」

「佐藤…?(紙をめくりながらチラリとこちらを見る)」

「あ、佐藤もえです」

「佐藤もえ様ですね、お待ちしていました。こちらのカルテの記入をお願いします(笑顔だが目が笑っていない)」

「こ、これ、全部ですか?(怯えながら)」

「はい」

「ざっと、30ページはありそうですが…(訴えかけるよ

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妄想日記「失敗作じゃない」

木村睦月 18歳 高校生

受験を目の前にして、今わたしの頭の中は「まっしろ」だった。もちろん、進路について無計画だったわけではない。それどころか、「大学生生活を送りたいから」という理由で受験する子たちよりも、美術という道に志を持って受験の年を迎えたはずだった。しかし、画塾に通い始め、いざ本格的に絵と向き合う時間が増えれば増えるほど、まっしろのキャンパスに描くべきものを見失った。そして、朝から昼ま

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妄想日記「初恋と巡る」

佐藤優 22歳 大学生

初めての教育実習、1日目が終わった。後は、明日の授業計画を担当教師に提出して帰るだけ。先輩たちから、「時間があるうちに体力温存すべし!」とのアドバイスをもらったので早く帰って眠ろうと思う。その時だった。ガラガラッと教室のドアが開いた。飛びあがった心臓を押さえながらドアの方を見ると、同じく左胸を押さえて立ちすくむ女子生徒がいた。私は、ホッとして見習い教師という立場を忘れ、フ

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妄想日記「全部、鍋の中」その2



そこまで読んでから、私は昔の苦い記憶を思い出した。幼稚園の頃、友達だった桃ちゃんと些細なことで喧嘩した。当時好きだった、おジャ魔女どれみのキラキラしたシールを私の前にかざしながら桃ちゃんはこう言った。「私、他のシールも沢山あるから、りこちゃんにもあげるよ」そう言われた私は嬉しくて桃ちゃんの家に遊びに行くと、桃ちゃんはくるりと振り返って笑った。「やっぱり、あげない!!!!」その瞬間、火が付いた

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妄想日記「全部、鍋の中」その1

葉加瀬理子 16歳 高校生

人は大体、眠った瞬間を覚えていない。だから、夢を見ていても途中まで夢だと気づかないことがある。今夜のように、夢の始まりが現実味を帯びているときは絶対に分からない。きっと、魂が私の身体にばれないようにそおっと夢への扉を開けたんだ。

そこは、慣れ親しんだ我が家のリビング。明るくて、長持ちするLEDライトがサンサンとダイニングテーブルを照らしている。ただ、いつもと違うのは

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楽描き「あなたへ」

あなたは
どんなおとなになるのかな
ふっくら炊きあがった豆みたいな
かわいい手のひらのまま
大きくなってくれたらな

どんなおんなになるのかな
どうか自分のために生きて欲しい
真っ直ぐな笑顔のまま
素敵なおんなになってね

どんな夢をもつのかな
本当はあんまり
びっくりさせないで欲しいけど
手放したくない夢を
ひとつだけ見つけてね

どんな人を好きになるのかな
車が好きな人と賭け事する人は
やめて

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妄想日記「親しい友達リスト」

藤田冬子 30歳 会社員

「親しい友達リスト」ってなんだ。ある日、朝起きていつものようにインスタグラムのストーリーを見ていたら、あるストーリーの右上に勲章みたいに緑の星のマークが付いていた。触れてみると、「親しい友達リスト」と表記されている。私は、何かの見間違いかと思って目をこすった。なぜなら、そのストーリーをあげた男の人と私は知り合い以上友達未満であって、絶対「親しい」ではない。そもそも、そん

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妄想日記「母とLINE電話」

「ああ、この前のお茶ありがとう。おいしかった」
目の前には、開けたばかりの段ボールと大量のお茶のパッケージがある。その中から一つ取り出して、パッケージに書かれた説明を見ながら母と電話をしている。まだ飲んではいないのだけれど、ここ最近仕事が忙しくて段ボールを開封するまで日にちが空いてしまった。罪滅ぼしの嘘だった。
「よかった。あれ、○○って店で見つけて、一つ一つ手作業で作ってるんだって」
「ふぅん、

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